1962年3月17日(土)
午後は、久しぶりにパリの中心部に買物に出かけた。
パリには百貨店が少なくないのだが、総じて東京や大阪などのものより小型で、品揃えも少ない。
しかしパリは、世界における百貨店の発祥の地とされている。
初めて世界に(パリに)誕生した百貨店は、「オー・ボンマルシェ」とされる。
百貨店の前身は、「マガザン・ド・ヌーボーテ(新しい流行の諸々を売る店)」だった。
それが次第に品揃えを増やし、大型化していって、「グランマガザン(百貨店=直訳すれば大型店)」に進化した。
「オー・ボンマルシェ」の発足は1852年だが、「グランマガザン」へと進化したのは、1869年とされている。
そのころ、夫は外で働き、妻は職業を持たずに家庭を守ると言う、家庭での男女の分業パターンが生まれた。
それまでは、「夫も妻も働かない」貴族階級と、「夫も妻も働く」庶民階級の、二つのパターンしかなかったらしい。
このように生まれた「専業主婦」は、新たな社交の場を求めており、百貨店の大きな発展理由は、その場を与えたことと推察する。
最初に行ったのは、「バザール・ド・ロテル・ド・ヴィル(通称BHV)」だった。
ここで59フラン(4,250円)の靴と、5.5フラン(400円)で毛糸編みの膝まである靴下を買ったが、もう一つ買いたかったものとして、気に入った帽子が見つからない。
そこで「サマリテーヌ」に行き、さらに「グラン・マガザン・ルーブル」まで長い道を歩いて、ついに41フラン(3,000円)で、気に入ったものを見つける。
これをかぶれば急に紳士になった気分になり、やや照れくさいが、明日からの旅にはピッタリと思う。
夜23時10分パリ・リヨン駅を出る、ランジャック行きの夜行列車に乗る。
明朝終点で乗換え、明日の正午ごろ南仏のニームに着く予定である。
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